〜大切な人の面影を、もう一度〜
大切な人とのお別れ。
その時間を、少しでも穏やかな気持ちで過ごしていただくために、私たち納棺師にできることがあります。
今回は、ご自宅で執り行った納棺式での出来事をご紹介します。
ご自宅で迎えたお別れの時間
ある日、葬儀社様から納棺式のご依頼をいただき、ご自宅へ伺いました。
事前の申し送りでは、訪問看護師の方々がエンゼルケアやお化粧を丁寧に施してくださっているとのこと。
「できるだけ今のお姿を変えずに」
そんなご意向も伺っていました。
訪問看護師の皆さまが、ご本人やご家族と過ごしてこられた時間。
そして、最期のお姿を整えるために尽くしてくださったケア。
その想いを大切に引き継ぎながら、私たちの納棺式が始まります。
ご自宅に到着すると、迎えてくださったのは旦那様お一人でした。
ご挨拶を交わした際、旦那様はどこか言葉少なで、静かなご様子。
大切な奥様を亡くされたばかりです。
そのお気持ちを簡単に推し量ることはできません。
それでも、私たちが準備を進めやすいよう、さりげなくお気遣いくださいました。
その優しさが、とても印象に残っています。
ご家族と一緒に整える、最後の身支度
準備を進めていると、娘様が到着されました。
旦那様と娘様、お二人に見守られながら納棺式を執り行うことになりました。
ご逝去から数日が経過していたため、まずはお顔の状態を丁寧に確認します。
人は亡くなられた後、時間の経過とともに少しずつお姿が変化していきます。
それは自然なことですが、ご家族にとっては、気になる変化が生じることもあります。
そこで、お二人にお声がけしました。
「お顔の表情やお色など、気になるところはございませんか?」
すると、いくつかのご希望をお話しくださいました。
事前に施されていたエンゼルケアを大切にしながら、時間の経過による変化や、ご家族が気にされている部分を中心に整えていきます。
私たち納棺師の仕事は、ただお姿をきれいにすることではありません。
ご家族が覚えている、その方らしい面影を大切にすること。
それも、大切な役割の一つだと考えています。
お好きだった口紅の色に
お顔を整える中で、口紅のお色についてもご希望を伺いました。
選ばれたのは、奥様が生前お好きだったお色味。
その色を唇に重ねていくと、少しずつ生前の面影に近づいていきます。
お化粧は、単にお顔を美しく見せるためだけのものではありません。
いつも使っていた口紅。
お気に入りだった洋服。
その方らしい髪形や表情。
ご家族の記憶の中には、何気ない日常のお姿が残っています。
だからこそ、ほんの少しのお色味や表情の違いが、大切な意味を持つことがあります。
最後の旅支度
お顔を整えた後は、爪を切り、旅支度を進めていきました。
一つひとつのお支度を丁寧に行い、最後にお棺へとお納めします。
そして、奥様がお好きだったお洋服も一緒にお入れしました。
大切にされていたお洋服が、奥様のそばに添えられます。
生前の暮らしや思い出が、そっとお棺の中に重なっていくような時間でした。
すべてのお支度を終え、お二人に見守られながら、お棺のふたを閉じました。
お二人の穏やかな表情
納棺式を終える頃、ふと旦那様と娘様のお顔に目を向けました。
最初にお会いしたときとは、少し違うご様子でした。
お二人とも、穏やかな表情をされていたのです。
もちろん、そのお気持ちのすべてを私が知ることはできません。
それでも、ご家族の希望を伺いながらお姿を整え、最後のお支度を一緒に進められたこと。
その時間が、お二人にとって少しでも安心につながっていたなら、これほど嬉しいことはありません。
今回の納棺式で、改めて感じたことがあります。
大切なのは、誰がお姿を整えたかではなく、ご本人とご家族の想いが大切にされているかどうか。
訪問看護師の皆さまが最期のケアに込めた想い。
ご家族が大切にしている、生前の面影。
そして、私たち納棺師ができる最後のお支度。
それぞれがつながることで、ご本人らしいお見送りに近づいていくのだと思います。
納棺式は、ただお棺に納める時間ではありません
納棺式と聞くと、「亡くなった方をお棺に納める儀式」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、それも大切な役割です。
けれど、私が18年間、納棺師として多くのご家族と向き合う中で感じてきたのは、納棺式にはそれ以上の意味があるということです。
ご本人のお姿を整えながら、思い出を振り返る。
ご家族の希望を伺いながら、その方らしい最後の身支度をする。
そして、大切な人とのお別れに、ゆっくりと向き合う。
納棺式は、ご本人の尊厳を守るとともに、ご家族の心にも寄り添う時間なのだと思います。
大切な人とのお別れに、決まった形はありません。
「いつもの表情に近づけてあげたい」
「好きだった洋服を着せてあげたい」
「家族みんなで最後のお支度をしてあげたい」
そんな小さな願いも、どうぞ大切にしてください。
悠縁では、ご本人やご家族の想いを伺いながら、その方らしいお見送りを一緒に考えています。
納棺式について、どのようなことができるのか。
ご家族も一緒に参加できるのか。
生前から相談することはできるのか。
気になることがございましたら、どうぞお気軽にお声がけください。
大切な人との最後の時間が、いつか振り返ったときに、温かな記憶として心に残りますように。
